Java Client Roadmap Updateによせて (後編)

というわけで先日アップした次のエントリの後編です。

aoe-tk.hatenablog.com

前回は年寄りの思い出話という感じでしたがまさかの大きな反響を頂いて驚いています。後編については JavaFX や Swing、そしてクロスプラットフォーム GUI の今後について思うところを書いていきたいと思います。

JavaFX は今後どうなる?

今回の決定で JavaFXJDK リリースから分離されることになったわけですが、逆に言うと JDK のリリースサイクルに縛られること無く開発を進められることになります。そして、私の感覚からすると、当面 JavaFX が廃れるような心配はしなくていいと見ています。

JavaFXJava EE と同様によりオープンソースコミュニティに今後の開発をゆだねることになりましたが、JavaFX のコミュニティは今でもとても盛り上がっています。OpenJFX の ML では今でも盛んに議論がされていますし、先のホワイトペーパーでも「情熱的なコミュニティ」であると賞賛しています。

実は今回の発表の少し前に OpenJFX のリーダーである Kevin Rushforth 氏から OpenJFX コミュニティの今後の方向性について問いかけがありました。

http://mail.openjdk.java.net/pipermail/openjfx-dev/2018-February/021335.html

この議論では大変な盛り上がりを見せ、より外部の人が入りやすくなるような雰囲気にしようという方向になりました。その一環として GitHub に OpenJFX のリポジトリのミラーも作られ、PR を受け付けられるようにしています (OCA へのサインは必要です) 。

github.com

このように、JDK のリリースサイクルに縛られず、より外部も参加しやすくなることで、かえって開発のスピードが上がる可能性もあると考えています。前編でも述べたように海外では結構採用事例があり、Gluon のように JavaFX をビジネスのメインにしている会社もあります *1

と言うわけで、Java の標準 GUI では無くなりましたが、優秀なライブラリとしてあり続けるだろうと思っています。前編でも述べましたが、とても開発しやすい API ですし、JavaGUI を作るときの最有力候補であることは変わらないと思っています。コミュニティとの連携も取りやすくなる方向になっていますし、業務で JavaFX を採用したところがあってもそんなに心配しなくてもいいと思います。

私自身はここ数年フロントエンドとは余り縁の無い仕事をしている事もあり、業務で JavaFX を触る機会は無かったのですが、自分の身の回りでで GUI を使った道具が必要な時は JavaFX で作っていました。今後もそのためには JavaFX を使い続けると思っています。

Swing について

紆余曲折を経て、Java のデフォルト GUI は Swing に戻った感があるのですが、前編でも述べたように OpenJDK では再び Swing に力が入りそうな雰囲気になっています。Swing に JavaFX の良いところ (FXML とかバインディングとか) が移植されるような流れにならないかなあ。

私は Swing は一定の成功を収めたと思っています。何より Swing が覇権を握っている分野があります。それは IDE です。NetBeans と JetBrains の IDE だけじゃないかと突っ込まれそうですが、特に JetBrains IDE のここ最近の躍進ぷりはすごいです。JavaScriptPythonPHPRuby、Go など実に様々な言語コミュニティで人気を博しています。

クロスプラットフォーム GUI の今後

今回の件でクロスプラットフォーム GUI というのはやっぱり難しいものだなとは思いました。でも需要があるのは確かです。ゲームエンジンの様にユースケースをより絞ったものは普及していますしね。

汎用的なクロスプラットフォーム GUI で一番成功しているのはやはり Qt でしょうか。モバイルへの進出にも成功していますし。開発言語は C++ ですが、他のプログラミング言語へのバインディング も多いです。ですが、Java バインディングである Jambi が死んでしまったんですよね...。 *2

後は有力候補としてはやはり Electron なんですかねえ。私は好きじゃないんですよ。ぶっちゃけ Chrome ブラウザそのものなので、Electron アプリを 1 つ立ち上げると (潤沢にリソースを使う) Chrome ブラウザが余計に 1 つ立ち上がるようなものなので、使う側としてそんなに好きじゃないんです。Web 開発の難しさをデスクトップ GUI アプリ開発に持ち込みますし、そんなに JavaScript + CSS で開発したいですか?と言いたい感じです。まあ古典的なスタイルの GUI 開発が好きな人間としては、WebComponents に期待しているところです。

モバイル OS 戦争に敗れ去った MS は Xamarin に力を入れていますし、最近は Flutter なんてのも登場しましたし、今後もクロスプラットフォーム GUI へのトライアルは色々な形で出てくるでしょうね、というところで雑感垂れ流しのエントリを締めくりりたいと思います。

*1:この会社は JavaFXiOSAndroid 向けアプリを開発できる、Gluon Mobile などを販売しています。

*2:3 年ほどコミットがなく、公式サイトもドメインが乗っ取られています...。