このエントリは JavaFX Advent Calendar 2015 の 7 日目のエントリです。前日は id:bitter_fox / @bitter_fox さんによる「 JavaFXを直接実行できるjshellを作った 」でした。 今年の Advent Calendar の自分の担当日はもう少し後だったのですが、空いていたので急遽ホットなネタで埋めることにしました。
先日、JavaFX コミュニティの間で、JavaFX を取り巻く現状について怒りをぶちまけた、以下のブログエントリが話題を呼んでいました。
Should Oracle Spring Clean JavaFX?
https://www.codenameone.com/blog/should-oracle-spring-clean-javafx.html
Java によるモバイルアプリケーション開発プラットフォームである Codename One の開発者である Shai Almog 氏 *1 によるエントリで、JavaFX の現状について、「Swing を置き換えるには到底至っていない」「Oracle 自体が JavaFX にコミットする姿勢を見せていない」とかなり厳しく批判しています。
このエントリは OpenJFX の ML でも話題になり、かなり激しい議論になりました。様々な意見が飛び交いましたが、やはり Oracle の JavaFX に対するコミットを疑問視する意見はかなり出てきました。
確かにここ最近の Oracle の行動には JavaFX から手を抜き始めているように見られてもおかしくないところが目に付きます。
Raspberry Pi 向け Oracle JDK での JavaFX サポートは停止し *2 、Scene Builder のバイナリ配布も停止してしまいました *3 。
Java9 と共にリリースされる JavaFX9 の新機能についても、大きな変更は Jigsaw 導入に対応して、これまで com.sun.javafx パッケージにあった API のうち、重要度の高いものを public するというものだけです。確かにこの対応は非常にリソースを割く作業であることは理解できますが、それにしても新しいコンポーネントの追加などが一切無いというのは寂しいものです。
ある程度議論が進んだところで、現在の JavaFX チームのリーダーである Kevin Rushforth 氏がコメントを挟んできました。
http://mail.openjdk.java.net/pipermail/openjfx-dev/2015-December/018320.html
JavaFX はOpenJFX というコミュニティで開発を進めており、意見はオープンに取り入れるつもりであること、決して数が多くは無いけど、JavaFX9 には中々興味深い改善をするつもりだよ、といった内容です。
まず、JavaOne でも発表したことのようですが、JavaFX9 の新機能として以下のようなものをリストアップしていました。
- A modularized JavaFX (into 6 core modules + deploy, swing interop, swt interop)
- JEP 253 -- Control Skins & additional CSS APIs (proper support for third-party controls)
- High DPI enhancements (full support on Windows; add support for Linux)
- Public API for commonly used methods from internal packages:
- Nested Event Loop
- Pulse Listener
- Platform Startup
- Text API (HitTest, etc)
- Static utility functions (under investigation)
- New versions of WebKit and GStreamer
4 番目はこれまで internal だった API のうち、便利そうなものを public にするというものですが、確かに地味に良さげなものが並んでしますね。Text API とか気になる。
さらに Java9 リリース延期の提案 を受けて、もう少し機能追加しても良いかもとのコメントをしています。候補として次のような機能を挙げています。
- Provide a JavaFX equivalent for JEP 272 / AWT ‘Desktop’ API
- Make UI Control Behaviors public
- UI Control Actions API
- Public Focus Traversal API
- JavaFX support for multi-resolution images
- Draggable tabs
- Image IO
1 番目は AWT 向けの JEP である JEP 272: Platform-Specific Desktop Features を JavaFX 向けにも提供しようというものです。この JEP はプラットフォーム固有のデスクトップ機能をより利用できるようにするというものです。過去には Java6 で一度強化が入っており、タスクトレイへのアクセスなどが可能になったりしましたが、久々にこの分野にテコ入れが入ることになります。
- Mac のアプリケーションメニューの利用 (かつて Apple Java に含まれていた EAWT では提供されていました) 。
- Windows タスクバー (Mac ではドック) のジャンプリストへのアクセス。
- Windows タスクバー (Mac ではドック) でのプログレス表示。
よりネイティブなアプリケーションとして振る舞うことが可能になるので、この強化は是非とも入って欲しいなあと思っています。ましてや近年は javapackager を使ってネイティブアプリっぽく配布することが推奨されていますし。まあ、AWT には入るので、最悪 JavaFX 側に入らなくても何とかなるのではありますが、JavaFX 側から AWT の API を触るときは別スレッドにする必要があって面倒ですし。
3 番目とか 4 番目は Swing にある同名の API と同じかな。Action API は欲しいですねえ。
5 番目は HiDPI 環境におけるビットマップ画像の扱いのことでしょうか。Windows、Mac 共に HiDPI 対応が入りましたが、ビットマップ画像の扱いは Mac 式になっており、整数倍にしか対応していません。Mac 式にしたのは恐らく暫定対応でしょうから、ここできちんと対応するということなのでしょう。
最後の Image IO も詳細は不明ですが、このあたりはまだまだ足りないところが多いので期待したいところですねえ。
こんな感じで思わぬところから、今後の機能強化について話が出てきました。幸い (?) Java9 のリリース延期はほぼ確実でしょうから、JavaFX9 ももう少し新しい機能が入った状態でリリースされることにはなりそうです。
まあ、そうは言ってもやっぱり Oracle は JavaFX に対してリソース抑えているよなあとは思いますが、それはまた別の話で。