先日、JDK8 の機能アップデート版である JDK 8u60 がリリースされました。このバージョンのリリースノートは以下です。
http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/8u60-relnotes-2620227.html
ですが、このリリースノートにはバンドルされている JavaFX 8u60 についての記述がありません。
以前から、JavaFX については 8u60 は安定性向上がメインのリリースになる、とのアナウンスがあったのですが、機能面でのアップデートが少し入っているようなので、自分が調べた範囲で分かったことをまとめます。
自分が調べた範囲では JavaFX 8u60 に次のアップデートが入っていることが分かりました。
Windows での HiDPI 対応について
まず 1 の Windows における HiDPI 対応についてです。こちらについては自分のブログでも以前に次のようなエントリを書いていました。
そのエントリで「とにもかくにも JavaFX が Windows でも Device Independent Pixel (DIP) に対応してくれるのが一番なんですけどねえ。」と結んでいたのですが、まさしくその対応が入ったことになります。
最近増えてきた高解像度端末では、そのままだと文字やアイコンなどが小さくなって読めたものじゃありません。そこで、Windows では物理的なスクリーンのサイズと解像度を見て、125%、150%、200%...と自動的にスケーリングを行うようになります。
私が使っている VAIO Tap 11 は 11 インチのディスプレイで解像度が Full HD (1920 x 1080) の端末なのですが、デフォルトで 125% のスケーリングが掛かっています。なのでこの端末だと、100px の長さのコンテンツが画面上では 125px を使って描画されるようになります (Windows のスケーリング設定を見てくれる処理系である場合) 。
これまでの JavaFX では、基準フォントサイズについては Windows のスケーリング設定を見て描画してくれたのですが *1 、プログラム上のピクセル指定についてはそのような考慮がありませんでした。それが 8u60 ではスケーリング設定の倍数を掛けたピクセル数で描画してくれるようになります。
詳細については OpenJFX の ML の以下のポストを参照してください。
http://mail.openjdk.java.net/pipermail/openjfx-dev/2015-June/017337.html
と言うわけで自分の VAIO Tap 11 でもスケーリングが掛かる!と思っていたのですが、 変わりませんでした 。
調べてみたところ、 スケーリングの設定が有効になるのは、スケーリングが 150% 以上の場合 という制約が掛かっているようです。
JDK Bug System の次のチケットなどでこの点について議論されていました。
https://bugs.openjdk.java.net/browse/JDK-8129862
https://bugs.openjdk.java.net/browse/JDK-8130748
どうも、125% のスケーリングではフォントがぼやけて描画されてしまう問題を解決できず、125% ではスケーリングを切ることにした模様です。残念。 *2
ただ、起動引数を使って強制的にスケーリングの設定を掛けることはできます。Java のシステムプロパティ glass.win.uiScale
を使って、次のように指定します。
$ java -Dglass.win.uiScale=125% -jar Application.jar
これを使って、自分の VAIO Tap 11 で Ensemble.jar を起動してみたスクリーンショットを示します。
きちんと 1.25 倍にされていることが分かりますね。フォントは確かに少しぼやけてましたが、そんなに気にするほどでもなかったかなあ。
次のアコーディオンのサンプルとかも分かり易いと思います。このアコーディオンは高さ、幅をピクセルで指定しています。
HiDPI 対応についてまとめるとこんな感じです。
- Windows 上でスケーリングの掛かっている環境では、プログラム中のピクセル指定に設定された倍数を掛けた数のピクセル数で描画される。
- ただしこの設定が有効になるのは 150% 以上から。
- 強制的に任意のスケーリングを指定したい場合はシステムプロパティ
glass.win.uiScale
を使って指定する。 - ビットマップ画像については、Apple 式の規則が適用され、整数倍の大きさの画像を用意しておけば、それが適用される。
詳細については上に示した OpenJFX の ML のポストを参照してください。
WebKit のバージョンアップについて
JavaFX 8u60 では WebView に使っている WebKit のバージョンが上がっています。主にセキュリティフィックスを取り込むためですが、少しだけ機能追加があるようです。
まず WebView の User-Agent の違いを示しておきます。
- JavaFX 8u40
- Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X) AppleWebKit/537.44 (KHTML, like Gecko) JavaFX/8.0 Safari/537.44
- JavaFX 8u60
- Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X) AppleWebKit/538.19 (KHTML, like Gecko) JavaFX/8.0 Safari/538.19
WebKit のバージョンが少し上がっていますね。
HTML5TEST を使ってみると、次のような違いがありました。
- ECMA Script 6 の Promise に対応している。
- URL API に対応している...らしい。
- これどんな API?
picture
要素に対応していないのに、なぜかsrcset
属性には対応しているという結果が出る。- これは多分テストが何かおかしい。
大きな違いはありませんが、Promise に対応したというのは大きいですね。
8u40 でのテスト結果は こちら で、8u60 での結果は こちら で参照することができます。
なお、HTML5 で新たに追加されたフォーム要素でカレンダーや色のピッカーがまともに動いていない問題 (私の過去の このエントリ でも触れています) 、は未だに対応していませんねえ。
バグトラッカにも チケットが上がっています が、放置状態です...。
以上、JavaFX 8u60 の新機能について、私が調べた範囲では大体こんなところです。他にも何か情報があったら、教えてもらえると幸いです。