JavaFX の WebView に文字列検索機能を付けてみる

このエントリは JavaFX Advent Calendar 2014 の 19 日目のエントリです。前日は id:yumix_h さんによる、「WebView(JavaFX)のズーム機能を使ってみました」でした。

はじめに

JavaFX には Web ブラウザコンポーネントである WebView が付いているのは皆さんよくご存じかと思います。
DOM へのアクセス、JavaScript 実行、ヒストリ情報へのアクセス、JavaScript イベントのフック、など様々な機能が提供されており、他の GUI ツールキットが提供するブラウザコンポーネントと比較しても遜色がないと思っています。

ただ、残念なことに WebView 上に表示されているコンテンツに対してテキスト検索を行うための API が用意されていないんですよね。
もちろん表示されているコンテンツの DOM にアクセス可能なので、その DOM を頑張ってパースするという手もあるのですが、中々辛い。

というわけで、既存の JavaScript ライブラリを使って手っ取り早く実装する方法を考えてみました。

作ってみたもの

次の図のように、WebView を使ったブラウザアプリケーションに検索ボックスを取り付け、検索ボックスに文字列を入力するとマッチする部分をハイライトするようにしました。

マッチした部分をハイライトするだけで、ハイライトした箇所にスクロールする機能はありません。

ちなみに、このスクリーンショットは、自分が作った Social Bookmark Viewer FX という、Diigo というソーシャルブックマークサービスのビューアアプリケーションの一部です。 *1

利用した JavaScript ライブラリ

この機能を実現するために次のライブラリを利用してみました。

JavaScript text higlighting jQuery plugin
http://johannburkard.de/blog/programming/javascript/highlight-javascript-text-higlighting-jquery-plugin.html

jQueryプラグインとして提供されているライブラリです。
使い方としては、予め以下の CSS クラスを定義しておき、

.highlight { background-color: yellow }

あとは次のようにこのプラグインjQuery オブジェクトに生える highlight() メソッドを、ハイライトしたい文字列を引数に渡して呼べば OK です。

$('body').highlight('foo');

WebView に検索機能を追加する

それではこれを WebView で使えるようにします。まず、WebView 上のドキュメントのロードに成功したら、jQuery 及び上で紹介した検索ライブラリをドキュメントに追加します。

final WebEngine webEngine = webView.getEngine();
final Worker<Void> loadWorker = webEngine.getLoadWorker();
loadWorker.stateProperty().addListener((observable, oldValue, newValue) -> {
    if (newValue == Worker.State.SUCCEEDED) {
        // 読み込みが成功した場合、検索用プラグインを読み込む
        Optional.ofNullable(webEngine.getDocument()).ifPresent(document -> {
            addScriptElement(document, "//ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/2.1.1/jquery.min.js"); // (1)
            addScriptElement(document, "http://johannburkard.de/resources/Johann/jquery.highlight-4.closure.js"); // (2)
            addStyleElement(document, ".highlight { background-color: yellow; }"); // (3)
        });
    }
});

WebEngine の読み込み状態を観察し、成功した場合にのみ検索用プラグインを読み込むようにしています。
(1) で jQuery を、(2) で検索ライブラリを、(3) で検索ライブラリが要求するスタイルクラスを DOM に追加しています。
JavaScript ライブラリはどちらもネットワークから直接読み込んでいます。

addScriptElement() メソッド及び addStyleElement() の実装は次のようになっています。

private void addScriptElement(Document document, String url) {
    final Element scriptElm = document.createElement("script");
    scriptElm.setAttribute("type", "text/javascript");
    scriptElm.setAttribute("src", url);
    NodeList bodys = document.getElementsByTagName("body");
    if (bodys != null && bodys.getLength() > 0) {
        bodys.item(0).appendChild(scriptElm);
    }
}

private void addStyleElement(Document document, String styleContent) {
    final Element styleElm = document.createElement("style");
    styleElm.setAttribute("type", "text/css");
    styleElm.setTextContent(styleContent);
    NodeList bodys = document.getElementsByTagName("body");
    if (bodys != null && bodys.getLength() > 0) {
        bodys.item(0).appendChild(styleElm);
    }
}

普通に DOM API を用いて、script 要素や style 要素を作ってドキュメントに追加しているのが分かりますね。

続いて検索テキストボックスに入力があったら、ハイライトする処理です。

final TextField pageSearchBox = new TextField();
pageSearchBox.textProperty().addListener(
        (observable, oldValue, newValue) -> highlightpage(Optional.ofNullable(newValue)));

TextField の text プロパティの変化時に highlightpage() メソッドを呼び出しています。
highlightpage() メソッドの実装は次のようになっています。

private void highlightpage(Optional<String> word) {
    Optional.ofNullable(webEngine.getDocument()).ifPresent(document -> {
        final String keyword = word.orElse("");
        webEngine.executeScript("$('body').removeHighlight()");
        if (!keyword.isEmpty()) {
            webEngine.executeScript("$('body').removeHighlight().highlight('" + keyword + "')");
        }
    });
}

WebEngine#executeScript() メソッドを使って、ハイライトを行う JavaScript ライブラリのメソッドをコールしています。

実装は以上です。これで上のスクリーンショットのような機能を実現できます。
JavaScript ライブラリの手助けで割と簡単にできましたね。これも JavaFX の WebView/WebEngine が DOM へのアクセスや JavaScript の実行を行える仕組みを提供してくれているからです。
ただし、この方法だと script 要素を追加して余計な JavaScript ライブラリを読み込ませたり、新たなスタイル定義を追加したりしているので、元々コンテンツがロードしている JavaScript コードやスタイル定義とバッティングする危険性があることに注意してください。 *2
重要度の高いアプリケーションでは JavaScript のスコープなどをより慎重に設計する必要があります。

明日は id:kikutaro777 さんの予定です。

*1:そのうちこれ自身の紹介エントリも書きたいと思っています。

*2:実際いくつかのサイトで不具合を起こしているのを確認しました