IntelliJ IDEA 2020.2でJavaFXのランタイムが同梱されなくなりました
IntelliJ IDEA の最新版 2020.2 がリリースされましたね。日本語でも新機能について案内する記事がアップされています。
この記事の最後のように次のような個人的に気になる記述がありました。
まず多くの人は「JCEFって何?」ってなると思います。これはアプリケーションに Chromium を組み込めるようにするためのフレームワーク CEF (Chromium Embedded Framework) の Java ラッパーのことです。
- CEF のプロジェクトページ - https://bitbucket.org/chromiumembedded/cef
- JCEF のプロジェクトページ - https://bitbucket.org/chromiumembedded/java-cef
IntelliJ は IDE 内部で使う Web ブラウザコンポーネント (Markdown エディタの HTML プレビューなどで使っています) として今後は JCEF を使うようになったということです。これまでは IDE 内部で使う Web ブラウザコンポーネントとしては JavaFX の WebView を使っていましたが、2020.2 でこれをやめることになります。本件について JetBrains の Blog 記事で説明がありました。
ご存じの通り IntelliJ は Swing をベースに作られています。従って JavaFX の WebView は JFXPanel を通して使うことになりますが、そのために性能やレンダリングの問題を解決できなかったとのことです。
実際、JavaFX と Swing はレンダリングスレッドもタイミングも異なり、Swing アプリの上で JavaFX ノードを描画するときは JavaFX のレンダリングエンジンである Prism エンジンではなく Java2D を使って描画するため、JavaFX のパフォーマンスを 100% 発揮することができないのも確かです。この不整合を解決しようとする計画も過去にはありましたが、 Oracle の JavaFX へのやる気が無くなった ので...。
というわけで上記の記事では IntelliJ のプラグイン開発者に対して今後は JavaFX への依存をやめ、Web ブラウザコンポーネントを使いたいときは JCEF を使うことを促しています。
ですが、JCEF は現在絶賛開発中のステータスで、ユーザーとして利用できるような段階にありません。ビルド方法のガイドはありますが利用方法のガイドはなく、API ドキュメントもありません。ラップ対象の CEF については既に利用可能なステータスにあり (C++ のライブラリです) 、ある程度ドキュメントもあるので、こちらを参照して利用方法を推測することになります。
さすがにこの状態で使うのは辛いので、JetBrains 側でラップした API をプラグイン開発者向けに用意したようです。以下のドキュメントで解説されています。
というわけで IntelliJ IDEA 2020.2 からは JavaFX のランタイムは同梱されなくなります。この点について個人的に1点気になることがありました。
実は IntelliJ は Java IDE の中で唯一 JavaFX Scene Builder を内部に組み込んでいた IDE でした。JavaFX のランタイムが同梱されなくなる 2020.2 ではどうなってしまうのでしょうか?
というわけで早速 FXML ファイルを開いてみました。すると...
「Scene Builder Kit をダウンロードしてくれ」というリンクが表示されました。このリンクをクリックすると次に JavaFX Runtime のダウンロードが求められ、それも行うと次のように Scene Builder が表示されました。
というわけで別途ランタイムをダウンロードする必要があるものの、Scene Builder が使えなくなったわけではないのでご安心ください。
以上、誰も気付かないであろう IDEA 2020.2 の変更点についてのお話でした。